フッ素の応用法には低濃度のものと高濃度のものがあり、近年の知見ではそれぞれの作用メカニズムに違いがあり、両方を行うことがムシ歯予防の確実な効果を上げることが解かりました。 (荒川 浩久(神奈川歯科大学特任教授)著 「乳幼児から高齢者まですべての患者さんへのフッ化物活用ガイド」から)
フッ素の効果を最大限に発揮させるために、ご家庭の毎日のセルフケアでは低濃度フッ素を取り入れ、定期検診の時には高濃度フッ素塗布を併用することをおすすめします。
低濃度のフッ素でも頻回に歯面に接触することにより、歯牙表面がむし歯に溶けないフッ素化アパタイトに変化します。
しかし低濃度フッ素は唾液や飲食ですぐ消失してしまうため、歯質への直接作用は十分ではありません。
日本では平成の時代にう蝕が激減していますが、これは当時の「各種歯磨き剤へのフッ素添加」の普及とまさに比例しており、世界の歯科衛生学の教科書で最もエビデンスが高く予防効果の明確なのがこの「フッ化物入り歯磨き剤の使用」とされています。
現在では、大人用からこども用まで市販のほとんどの歯磨剤にフッ化物は含まれています。
なかには歯磨き剤が苦手なお子さんもいますね。 でも最近のお子さんは乳児の頃からフッ素入り歯磨剤やフッ素ジェルを使われています。
[口腔環境に対する作用]
近年解ってきたのが、この低濃度フッ素の作用メカニズムが、直接歯牙表面に作用する以外に「口腔全体の表面積の80%を占める口腔粘膜にフッ素が保持される」ということ。 そこから口腔内と歯質にフッ素イオンが徐々に放出されて、抗菌作用と歯質強化が行われるというメカニズムです。
その上、ブラッシングで残ってしまった歯垢(プラーク)の中へもフッ化物は取り込まれ、細菌の活動を抑制し、歯表面の脱灰抑制と再石灰化に働くとのことです。
つまり歯磨剤使用の歯磨きとフッ素洗口の併用が、なおさら効果があることが解かってきました。
フッ化物洗口(毎日法 225~450ppm)
その[口腔環境に対する作用]の点から、事後に濯がない「フッ化物洗口」法の有効性が見直されています。 通常の歯磨きは、フッ素入り歯磨剤を使用しても口を何度も濯いでしまうためフッ化物濃度が下がってしまうのですが、「フッ化物洗口」は余剰分を吐き出すだけなのです。
その効能の原理と各地から報告される優れた実績から、給食の後などに取り入れる小学校も全国で急増しています。
小学校などの取組みのないご家庭では、ご自宅で就寝直前のルーティン作業に習慣づけることで、著しい予防の恩恵が予測されるため、当院では4歳以上のブクブクうがいができる(確実に飲み込まない年齢)お子様にはフッ化物の洗口をおススメをしています。
有病者や障がい者にも問題は無くアレルギーの原因となることもない。たとえ全量飲み込んでしまっても健康被害を発生することもなく、安全性は確保されています。
歯磨剤は石鹸のように泡の洗浄効果も高いのですが、必ず口を濯ぎます。 デンタルリンスも口を濯ぎますので、薬効成分の利く時間も限られています。
しかしフッ素洗口は濯ぎません。 薬効成分が長時間口腔内に残り、口腔粘膜を経由して細菌コントロールと歯質の強化を行います。
フッ化物歯面塗布は、歯科医院や保健所において、家庭用の10倍濃いフッ化物( 9,000ppm)を用います。
フッ化物歯面塗布は、萌出後の歯のエナメル質表面に直接フッ化物を作用させることにより、歯質の改善を図り、ムシ歯に対する抵抗性を与えるやり方です。
特に萌出して間もない歯ほど、フッ化物イオンの多く取り込まれ反応性も高く、繰り返しの塗布で効果が上がります。
高濃度のフッ化物は乾燥した歯面に3~4分間塗布することで、水や唾液に強いフッ化カルシウムの膜が生成され、数週間維持されます。 歯面上に残ったフッ化カルシウムは少しずつ酸に溶解してCaイオンとFイオンとなり、ムシ歯の酸に強いフッ素化アパタイトが産生されていきます。
歯は口腔内に萌出したての新しい歯ほど、フッ化物が良く取り込まれ、予防効果の恩恵が大きくなります。
永久歯の萌出期には特に、年に2~4回のフッ化物局所塗布をいたしましょう。
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